今回は関節可動域や関節拘縮の原因と推奨される理学療法について
一般的な基礎知識を中心に簡単に読めるようにまとめます。
理学療法の対象者のほとんどに関わる病態である関節可動域制限
これに向き合うヒントになるよう分かりやすく解説します。
3分程度で読める簡単な内容になっています。
一緒に理解を深めていきましょう!
この記事で分かること
- 関節可動域制限の基礎知識
- 関節拘縮の要因
- 関節拘縮が進行する期間
- 関節拘縮の予防・改善に向けた一般的な理学療法
関節可動域制限の基礎知識
関節可動域制限とは、何らかの要因で本来の関節可動域を十分に動かすことができなくなっている状態です。
この関節可動域制限は理学療法の対象者のほとんどに関わる病態です。
加えて、多関節に及ぶ場合が多く
整形疾患や脳血管障害後の可動域制限の改善はもちろんのこと
虚弱高齢者の、特に終末期にかけての可動域の維持や制限の改善が重要視されています。
この関節可動域制限の病態として関節拘縮があります。
関節拘縮とは、筋緊張(スパズム)を除去しても残る制限のことです。
関節拘縮の主な原因は不動によるものと言われています。
不活動によって関節や皮膚組織の間にコラーゲン線維が増殖することで
関節を動かせなくなってしまう病態です。
関節可動域制限の要因はいくつかあります。
- 皮膚性
- 骨格筋性
- 関節包性
- 靭帯性
これらの要因で起こる関節可動域制限や関節拘縮は
理学療法で改善が見込まれると言われています。
一方で、骨折や変形などの器質的な変化
つまり、骨格自体が変形し固定されていることや
関節が破壊されていることによって起こる関節拘縮は
理学療法での改善が見込まれにくいと言われています。
可動域制限は対象者の生活の向上や介助者の介護負担の軽減に
大きく影響する要素のひとつです。
理学療法士は関節可動域制限の原因は何か、正確に評価して
治療にあたる必要があります。
関節拘縮の要因
1.皮膚性拘縮
真皮と皮下組織由来の拘縮。
不動1週間でコラーゲン線維の増殖と皮下脂肪の萎縮は始まる。
4週間後に加速的に進行し動かせない(強直)状態となる。
2.骨格筋性拘縮
骨格筋の伸張性を調整している筋膜由来の拘縮。
筋膜の周囲にコラーゲン線維が増殖することで筋膜が肥厚し
伸張性が低下することにともない関節運動が困難になる状態。
不動1週間で発生し、4週間以降も進行。
重症例では、壊死や消化された筋細胞と置き換わるようにコラーゲン線維が増殖し
関節のみではなく、筋肉も運動しにくい状態になってしまうと言われている。
3.関節包性拘縮
滑膜と線維膜の間の滑走性低下に由来する拘縮。
特に、コラーゲン線維に起因する滑膜の肥厚や弾性の低下が特徴。
不動1週間から発生し、4週間以降は進行が顕著と言われている。
4.靭帯性
拘縮の原因としては不適当と言われている。
靭帯の主成分は約65%が水分、約25%がコラーゲン
不動により靭帯は脆弱になるとされている。
つまり、もろく壊れやすい組織になってしまうため
関節拘縮を起こす原因ではないという報告が主流となっている。
一方で、壊れやすいため、理学療法の介入時は
可動域を出したいがために靭帯損傷を引き起こさないように注意して
可動域運動を行う必要がある。
関節拘縮の予防・改善にむけた一般的な考え方
関節拘縮は不動が主な要因となる。
つまり、身体活動や関節運動の維持が予防にとっては重要とされる。
理学療法士が主に行う治療方法は
- 運動療法
- 物理療法
- 装具療法
が挙げられる。
運動療法は、高頻度の自他動可動域運動が推奨される。
マッサージやストレッチも無意味ではないが
拘縮の予防や改善には効果が低いという報告もある。
物理療法は温熱療法や超音波療法などが推奨されている。
まとめ
- 関節可動域制限は理学療法士がほとんどの場面で関わる病態
- 関節拘縮の予防や改善は虚弱高齢者の終末期にまで関わる要素
- 関節拘縮は不動によって起こる
- 皮膚性、骨格筋性、関節包性が拘縮に起因する
- 靭帯性は可動域制限に関わるが、拘縮の要因とはなりにくい
- 運動療法などで身体活動や関節運動を維持することが重要
多くの理学療法士が関わる関節可動域制限
その基礎知識をまとめました。
実際はもっと複数の要素が折り重なっているため
治療場面では一概に「これが原因だ!」と断言できる場面は少ないように思います。
明日の治療の一助になれば幸いです。
最後まで読んでいただいきありがとうございます!