今回は立位姿勢での“よい姿勢”はどんな姿勢なのかについて分かりやすく解説します。
いままでの人生で「よい姿勢で立ちましょう」「あなたの姿勢は悪いですね」など
姿勢について指摘されたことの無い人は居ないと思います。
それではあなたは“よい姿勢”はどんな姿勢なのか説明できますか?
いざ説明するとなると、非常に難しいと思います。
この記事では、そんな疑問や質問の解答やヒントになることをまとめています。
一緒に理解を深めていきましょう!
この記事で分かること
- 解剖生理学的な安定して立位姿勢の指標
- 様々な視点からの“よい姿勢”について
- 姿勢を評価観察して捉えるための考え方
解剖生理学的に安定した立位姿勢の特徴
2足歩行である私たちの基本姿勢となる立位姿勢ですが
この立位姿勢の安定には、骨関節などの構造的な要素やバランス能力
重心位置など様々な要素が組み合わさって安定性を保っています。
今回は、重心とアライメント(alignment ; 3つ以上の点が一直線上に並ぶこと)を軸に
基本的な立位姿勢の理想的なアライメントを説明します。
まず、前提として、重心位置は体表面から観察できません。
そのため、骨などの身体の構造物からランドマークを用いて姿勢を観察します。
その時に指標になる箇所は以下の通りです。
左右方向のアライメント:背面からみて次の5つのポイントが一直線上にあるか
- 後頭隆起
- 椎骨棘突起
- 殿裂(おしりの中心)
- 両膝関節内側の間の中間点
- 両内果(内くるぶし)の間の中間点
前後方向のアライメント:側面からみて次の5つのポイントが一直線上にあるか
- 耳垂(耳たぶ)
- 肩峰(肩関節の天井を作っている骨)
- 大転子(おしりの側面で触れる骨)
- 膝関節前部(膝蓋骨の後面)
- 外果の前方
重心線(床から頭頂部までの垂直線)が、これらの点を一直線に通っているのが解剖学的に理想的な姿勢と言われています。
理想的な姿勢保持はエネルギー効率が良く
このアライメントから重心線が外れると、エネルギー消費を最小にするために
代償的姿勢戦略が働き安定した姿勢を保とうとします。
“よい姿勢”とは? 多角的な視点から分かりやすく解説
結論から言うと、よい姿勢やわるい姿勢の判断は、どのような視点からみるかによって異なります。
例えば、骨関節や靭帯による安定性のみで姿勢を保っていたとき
エネルギー効率的には“よい姿勢”でも、美的な視点でみれば“わるい姿勢”にみられてしまうかもしれません。
それでは、いくつかの視点からみたときの安定している“よい姿勢”の特徴を解説します。
力学的視点
力学的なよい姿勢とは、安定しているということです。
この安定している状態というのは、身体の各部位の重心を統合した重心線が支持基底面(両足や補助具などで支えている面)の中に位置していることです。
2本足で立位姿勢を保つとき、両足の前後左右のちょうど中心に重心線があるときに最も安定します。
逆に、支持基底面の辺縁になるほど、重力による回転トルクやモーメントなどが発生しバランスを維持するための筋活動や靭帯の緊張が必要となります。
生理学的視点
生理学的視点でのよい姿勢とは、疲労しにくいことです。
同じ姿勢を長時間に渡り維持していると筋疲労が生じます。
また、筋が過緊張になると血液循環も停滞するため疲労を助長してしまいます。
内臓に過剰な圧迫が加わらないことや、心拍数が安定する姿勢をとることで身体負担を少なく抑えること
そして、エネルギー消費が少なく、最小の筋活動で姿勢保持を行えることが
生理学的によい姿勢とされています。
心理学的視点
心理学的視点では、姿勢はそのときの個人のパーソナリティや情動に影響されると言われいます。
自信があるときは伸展位の活動が優位になり、逆に不安や劣等感は屈曲位の活動が優位になるとされています。
確かに、「胸を張って歩く」とか「落ち込んでうつむく」とか
心当たる場面がありますね。
心や感情のもち方は神経系全体の機能に影響するとされているため、心理的視点からの観察も重要といえます。
作業能率的視点
作業能率からみてのよい姿勢とは、作業場面において最も効率的な姿勢です。
作業場面では自分の姿勢のみではなく、自分と作業環境との位置関係などの空間的な要素も含まれます。
例えば、自分の身長に対して作業台が低い場合
身をかがめて作業をするのか、座って作業するのか、作業台を高く調整するのか
様々な要素から最も適した姿勢をとることが、作業能率的なよい姿勢と言えます。
美学的視点
美学的視点でのよい姿勢とは、見て美しい姿勢です。
おそらく、私たちはこの視点で“よい姿勢”を考えることが多いと思います。
この美的要素はいくつかあります。
- バランスと対称性:力学的につり合いのとれた姿勢。左右対称的な構造であること
- プロポーション:人体のプロポーションでは各分節、部分の占める比率から定める理想的な基準
この美的視点においての、人間の形態美は最良の健康に一致すると言われています。
身長は頭の8倍、手掌・指の長さの9倍、足底の長さの7倍が理想的とされています。
いわゆる8等身です。
まとめ
今回は様々な視点からの“よい姿勢”をまとめてみました。
1つの視点からみて「私は姿勢が悪いな」と判断するのではなく
多角的にみて「今の私の姿勢はよい姿勢かどうか」を判断できるといいな、と思います。
患者様やリハビリ対象者様の筋力や柔軟性、特徴などをとらえて最適を指導することが
理学療法士にとって重要な役割ですよね。
正常や理想的な指標を知ることは大切ですが、その指標から外れていることが
本当に不利益をもたらしているのかどうかを考えながら評価、指導を進めることが重要です。
この記事を読むことで、あなたの疑問の解決の一助にとなれれば幸いです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!